タイミング法・人工授精・体外受精は、卵子と精子が出会うまでを、医療がどこまで手助けするかが違います。タイミング法と人工授精では、受精は体の中で起こります[1]。体外受精では、体の外で受精させて、育った胚を子宮に戻します[1]。年齢や原因によって、どこから始めて、いつ次へ進むかが変わります[1]。

3 つの治療は、何が違うのでしょうか?

3 つの治療は、卵子と精子が出会うまでの「どこを手助けするか」で分けられます。

  • タイミング法:超音波で卵胞の大きさを測り、排卵の日を予測して[1]、性交の日を合わせます。
  • 人工授精:精液を洗って、動きのよい精子を集め、排卵のころに細い管で子宮の中へ入れます[1]。
  • 体外受精:薬で卵巣にはたらきかけて卵子を育て、細い針で卵子をとり出します[1]。体の外で卵子と精子を出会わせ、育った胚を子宮に戻します。精子を 1 つ選んで卵子の中に入れる方法を、顕微授精[1]といいます。
タイミング法・人工授精・体外受精のちがい 3 つの治療は、医療が手助けする範囲が違います 何をするか 受精する場所 1 回あたりの 妊娠率 区切りの めやす タイミング法 人工授精 体外受精・顕微授精 一般不妊治療 一般不妊治療 生殖補助医療 超音波で排卵日を予測し 性交の日を合わせる 洗って集めた精子を 子宮の中へ入れる 卵子をとり出し、体の外で 受精させて胚を子宮に戻す 体の中 体の中 体の外 〜10% ほど (海外の研究) 5〜10% (薬を使うと 10〜15%) 胚移植 1 回で 39.0% (2023 年、全年齢) 6 周期ほどで 頭打ち 4〜6 回ほどで 頭打ち 年齢で大きく変わる (40 歳以上はこちらから) 年齢や原因によっては、最初から体外受精を選ぶこともあります
3 つの治療は、卵子と精子が出会うまでを医療がどこまで手助けするかが違います。数字はめやすで、年齢や原因によって大きく変わります。人工授精は 1 回の治療あたり、体外受精は胚移植 1 回あたりの数字なので、そのままはくらべられません。年齢や原因によっては、最初から体外受精を選ぶこともあります。 出どころ: 生殖医療 Q&A 2025(Q8 一般不妊治療、Q10 人工授精、Q11 体外受精)(2025)、2023 年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績(ART データブック)(2025)、Predictive Factors of Conception and the Cumulative Pregnancy Rate in Subfertile Couples Undergoing Timed Intercourse With Ultrasound(2021) 画像として保存

人工授精は、どのような人に向いているのでしょうか?

人工授精は、次のような場合に考えられます。

  • 精子の数が少なめ、または動きが少し弱い[1]
  • 性交や射精がうまくいかない
  • 検査をしても原因がわからない(原因不明不妊)

1 回ごとの数字だけを見ると、少なく感じるかもしれませんね。原因不明不妊で、自然に妊娠する見込みが低いと考えられたカップル[6]を対象にした海外の試験があります。排卵を助ける薬を使った人工授精を 3 回行うと、およそ 3 割が出産に至りました[6]。人工授精をせずに、タイミングを合わせて 3 周期待った場合は、およそ 1 割でした[6]。

体外受精は、どのような人に向いているのでしょうか?

体外受精は、もともと卵管がふさがっている人のために始まった治療[1]です。今は、次のような場合にも使われます。

  • 卵管がふさがっている、または精子がとても少ない
  • タイミング法や人工授精を続けても妊娠しない
  • 年齢が高く、時間をかけにくい

年齢によって移植成績は大きく変わります。年齢ごとの数字は「年齢とともに、妊娠のしやすさはどう変わるのでしょうか?」で説明しています。

治療は、どのような順番で進めるのでしょうか?

日本生殖医学会は、年齢と卵巣の状態によって、進め方を次のように分けています。

  • 35 歳未満で、卵巣の働きが保たれている[1]:タイミング法 → 人工授精 → 体外受精の順に進める
  • 35 歳以上、または卵巣の働きが下がっている:タイミング法と人工授精は合わせて 6 周期ほど[1]にして、早めに体外受精を考える
  • 40 歳以上:体外受精がすすめられる[1]

順番どおりに進めるのが決まりということではありません。どの治療も、二人で受けるものです。気持ちや生活のことも含めて、二人で話しながら、医師と一緒に決めていけるとよいと思います。

それぞれ、どのような負担やリスクがあるのでしょうか?

治療が進むほど、通院の回数や体の負担は増えていきます。

  • 排卵を助ける薬:卵胞がいくつも育つと、双子などの多胎妊娠や、卵巣が腫れる卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が起こりやすくなります。
  • 人工授精:処置のあとに、軽い痛みや少量の出血があることがあります。
  • 体外受精:卵子をとるときに針を刺すので、痛みや出血があることがあります。多胎妊娠を防ぐため、日本では移植する胚は原則 1 個[2]です。

2022 年 4 月から、タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精は、保険で受けられるようになりました[4]。くわしい条件は、通院先の医療機関で確かめておくと安心です。